誰もが日々の生活の中で、さまざまな感動を体験しています。たとえば、旅に出て大自然の雄大な光景を目の当たりにしたとき、過酷なレースの末に金メダルを獲得したアスリートの涙を見たとき、他人や世界に対して献身して尽くす話を聞いたとき、良質の芸術にふれたとき、人の心は大きく動かされます。

もちろん、難問解決の糸口の発見や、もやもやしていたことが腑に落ちた喜びも感動といえるでしょうし、また気に入ったグッズや洋服を発見したときの 「超~カンドウ!or ♥ 」といった印象だって感動です。

詩人相田みつをは「"感動"とは、"感じて動く"と書くんだなぁ。」といいましたが、「感動」は心を激しく動かされる情緒反応であると同時に、人をなんらかの行動にうながす動因になることが多いのです。

2003年に民間大手のシンクタンク三菱総研とgooリサーチが共同で、インターネットを使った感動にかんするアンケート調査を実施しました。その結果によると、"感動するために意識的におこなっている行動(レポートでは「感動探し」と呼んでいる)"のビジネス市場規模を5兆円と試算しています。

感動探しに使う平均金額は、ひと月当たり平均1万1400円/人で、これをベースに市場規模を算出すると、感動ビジネスの市場規模は年間5兆円にのぼるのだそうです。ちなみに、感動探しの世代別内容は、10代・20代は「映画を見る」、30代・40代は「良好な家族関係の維持」、50代・60代は「旅行に行く」「自然に触れる」が主なようで、全体の約9割が「来年はもっと感動したい」と望んでいるといいます。

ところで、この感動市場を構成するビジネスは、おおむね七つのタイプに分けられます。(表1)これでいくと、感動市場に注目する企業は「感動」の使用価値を、①感動を追求する開発コンセプトによるモノ・サービスづくり、②感動を提供する体験の場やコンテンツづくり、③感動をサービス基準においたサービスプランへの反映や顧客・従業員満足(CS/ES) の向上、とみているようです。

また、ビジネスにおける感動の効用を考えた場合、感動による記憶の強い定着、共感動による強い関係、感動による充足感や満足、といったことから、生活者と商品や企業とのより確かな絆づくりを狙っているように思います。

感動で人の心が動き、市場も動く。この原理にもとづいたさまざまな企業戦略が、5兆円の感動市場で展開しているのです。